[第9話あらすじ]「なつよ、夢の扉を開け(9)」
家を飛び出し帯広までやってきたなつ(粟野咲莉)は、川のほとりで魚釣りをする天陽(荒井雄斗)を見つける。ひとりで来ていたなつを天陽は心配し声をかける。なつは家族を待っていると強がるが、やがて天陽も家路に着き、ひとり河原に残されてしまう。なつは父の形見の手紙を取り出し、読む。涙があふれだすなつ。すると…
(Yahoo!テレビ]より引用)
前回の感想で、演出面の良さにちょっと触れたが、今回も演出が良かったシーンがあったので、少々書いてみる。それは、序盤からの、奥原なつが亡き父からの手紙を読むシーンだ。まっ、分析すると演出だけでなく脚本と俳優の三位一体の成せる技と言うべきなのだが。
まず演出の掟通りに、最初にこの度の舞台が川辺であることを示す「川に刺さる木の枝の上でさえずる小鳥のカット。この「最初は一羽」で2カット目で「小鳥が二羽」と言うのが、アバンで描かれた富士子が言った「なつが家を飛び出した理由」に繋がるように映った。
これまでの出来事に繋がれば「なつは一人でない、剛男たちもいる」とも受け取れるし、「なつには兄・咲太郎もいる」とも受け取れられるし、実はそのあとの「なつの心にはお父さんがいる」の前振りにもなっている。単なる場所説明のための情景カットに、様々な意味を含めたのは演出の技だ。
が、すぐにハープとクラリネットの優しい劇伴が流れて、今度は未来の奥原なつのモノローグになって、先のアニメーションの説明が入る。そして劇伴にはギターが加わり楽曲のサビに来たところで、なつが泰樹の呼び声で現実に引き戻される。
父の声と共にアニメーションが動き始めまるこの場面は『なつぞら』序盤の名場面であり重要な要素が詰まっている大切な場面でもある。
・ナレーターの正体は、なつの亡だった
咲太郎は[店の再建]による家族再建を願っていたが、なつの場合は[アニメーション]による家族再建を目指していることがわかる
・実質的な成果を得たい咲太郎、想像力による成果を得たいなつ
起きたまま見た夢、想像力で描いた最初の夢・・・流れる歌は「私の青空」印象的です。
ここまでの間。映像は幼少期のなつだけで、俳優は粟野咲莉さんと内村光良さんと広瀬すずさんの演技力に、巧みな映像と音の編集で、しっかりと「奥原なつ」が自立心が強く創造力が豊かな人物なのが十分に分かった秀逸なシーンだと思う。
そして、今回は川辺のシーンの直後の「菓子屋・雪月」のファーストカットに軒先の「雪月」の行灯のカットが使われた。ドラマ上、なつが食べるアイスクリームをどうしても強調したかったのだろう。流石に川辺の直後にアイスクリームでは強引だし、全員の引きのカットの後では印象が弱まる。この辺の編集のさじ加減も今のところは順調だ。
そして、終盤では、なつが正式に奥原家の一員となった家族としての喜びが描かれ、ラストでは泰樹の「バターチャーンで世界一のバターを作る」と言う夢が語られた。
幾分唐突ではあるが、やはり今作が始まって以来描かれ続けている、なつと泰樹の心の絆の延長線上の物語として、なつが泰樹の夢にどう関わって行くのかと言う楽しみが増えた。そんな第9回でした😊😊
Comments