鈴愛は正人に振られて以降、清と律の関係を急速に意識し始めていく。自分にとって本当に大切な存在、それは律だ。奪われてたまるものか。そんな気持ちに駆り立てられて思わず清に「律は私のものだ!」とありもしない律の所有権を主張してしまう。
清との喧嘩の夜、律に呼び出された鈴愛。今まで2人の周りで起こった、笑いあり、涙ありの20余年軌跡を見てきた。がこの回を境に、2人が積み上げてきたかけがえのない多くのものが一気に失われていくそんな虚無感に襲われた。
「おもかげで」向かい合い、話始める2人。律は清から梟会の写真を破いたのは鈴愛だと聞かされます。ま、確かにそうなんですが、何か清に悪意を感じますよね。鈴愛は複雑そうにありのままを説明します。律も鈴愛のこと信じている様子。問題はそこではようで。
清と喧嘩をしてしまった鈴愛は「恋って怖いね」と呟きます。正人に振られた時はあんなに泣いたのに怖いと思わなかったのに・・・
律曰く、鈴愛はドラえもん。律にとってのしずかちゃんは清である。恋人同士の関係をこえた関係で結ばれているのだと。ある意味、世間一般的な男女関係なんかよりずっと貴重な関係性であって、それはたとえ清と付き合っても律は、誰のものでもないと言い切った。問題はここです。2人の絆と思い出は消えたりしないで永遠なのだ。それなのに親友で幼馴染だったのに壁を踏み超えるルール違反をしてしまった鈴愛に律は冷談になる。彼は清を傷つけないのです。鈴愛は、今までの様に律と誕生日を祝いたかった、一緒にいたかった、いてほしかったのです。
「それなのになんであの子が律の部屋におると」理不尽なこといってしまう。そんな鈴愛に律はこれが鈴愛に見せる最後の顔だからと笑顔で残酷なことを言い2人の関係を壊していく。この時に鈴愛は律との別れを覚悟したのか、「律がいなくなると地面が無くなるようで立っているのが怖い」と嘆きかけるが「もう遅い」と律は突き放す。
たった2人だけの時間、永野さんと佐藤さんの15分間の至極の2人芝居に自然と涙が溢れました。涼次と鈴愛の別れのシーンが動なら律と鈴愛の別れのシーンは静に感じます。
別れを決め「おもかげ」を出た2人は街を歩きながら鈴愛の最後の願いで“思い出ごっこ”をします。
糸電話、ゾートロープ、鈴愛の晴れ着姿、ともしび、卒業式・・・・思い出を交互に言い合う律と鈴愛。生まれたからほとんどの出来事を共有している2人の思い出は尽きない。
律の時の「この時僕たちは記憶のお手玉をした」のナレーションがより胸を締め付けます。
この時の“記憶のお手玉”という言葉は北川先生でしか出てこない至極の言葉。先生のボキャブラリーはどこまで凄いのだろうか。
やがて2人の時間に終わりが訪れる。鈴愛の家に着き律は「誕生日おめでとう。3分過ぎたけど」と鈴愛に言います3分遅れのお祝いの言葉。たった3分が切ないです。
「バイバイ律」
「サヨナラ鈴愛」
鈴愛と距離を置くため引っ越す律。
10代最後の誕生日。生まれてからずっと繋がってきた2人は別れを告げた。
律に背中を見せハードボイルドに決める鈴愛。そして律は鈴愛の短冊を一枚手に取る。
そこには“律がロボットを発明しますように”彼は夢を盗んだ。
それを上方から映し出していたカメラが後の『月が屋根に隠れる』の月ではないかと思わせた。もしかしたら2人は間違った選択をしたのかも。これも“運命の2人”という快い絆に頼り過ぎた彼らにとって必要な回り道なのでしょうか。
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